産業の生産能力について

生産能力は企業の価格決定力に大きな影響を持つ。生産能力が足りない場合はどの企業も大きな価格決定力を持つことができる一方、余剰な場合は安売り合戦に繋がりかねない。

分析する立場としては、現在の生産能力と将来の公表されている生産能力について把握しておくことが重要となる。また、さらに先んじて開示資料などから企業の設備投資を予測することも良い方法だ。

その中で特に注意すべきこととしては、在庫循環が激しい業界に置きがちな過剰な能力の拡大だ。とりわけサプライチェーンの上流に行けば行くほど、最終需要からの振れ幅が大きくなり、業績にも大きく影響する。

例:シリコンサイクル

例を挙げると半導体業界が振れ幅の大きい典型的な産業である。耳にしたことがあるかもしれないが、シリコンサイクル(=半導体の在庫循環)は振れ幅の大きさを表す典型的な言葉であり、最終需要つまりPC、スマホ、車の需要よりも半導体は振れ幅が大きくなる傾向にある。これは電子機器や自動車メーカーによる将来の需要予測が正確にはいかず、景気が良い時に半導体メーカーに対して過大に注文、景気が悪い時に過少に注文することから発生する。(なおさらにその上流に位置する半導体の装置メーカーや材料メーカーの振れ幅は基本的により大きい。)よくある話としては、景気が良い時に半導体メーカーが恒常的に需要があるものだと思い込み過剰に生産設備を拡張してしまう。生産設備を拡大しすぎたメーカーが不況期にはどうなるかというと、過剰な生産能力、つまり嵩む減価償却費に比べて売り上げを出せないため、利益が低迷するのである。

この生産能力という概念は、必ずしも工場などの設備だけに当てはまるものではなく、生産に不可欠な従業員などにも当てはまる。しかし、業績に大きな影響を及ぼすのは多大な金額をかけた投資、すなわち大型機械や工場への支出になることが多い。投資する側の視点としては、産業の生産能力、業績、株価の関係を正確に読み解けば、安いところで株を買い、高いところで売ることができる。一筋縄では行かないが、生産能力というのは、投資を行う時には必ず考慮すべき要素の一つだ。

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